50代後半になっても仕事の第一線に立ち、会社を経営し、責任ある立場で活躍する。
家庭に帰れば、母親として子どもを育て、家族を守る。
仕事も家庭も、どちらか一方ではなく、両方を長い間背負ってきた。
そんな女性と婚活のカウンセリングでお話をしていると、ふと感じることがあります。
「この方は、長い間ずっと“戦う側”で生きてこられたのだな」
もちろん、「戦う」という言葉は、誰かと争ってきたという意味ではありません。
簡単に弱音を吐けない場所で、自分の責任を果たし続けてきたということです。
経営者であれば、会社の未来を考えなければなりません。
社員やその家族の生活まで背負うこともあります。
売上が落ちれば自分が考える。
トラブルが起これば自分が決断する。
誰かが最後に責任を取らなければならない場面では、自分が前に出る。
家庭でも同じです。
子どものこと。
親のこと。
家のこと。
お金のこと。
自分が疲れているからといって、すべてを放り出すわけにはいきません。
「誰かが何とかしてくれる」
そう思える環境ではなかった女性も少なくないでしょう。
だから、自分で考える。
自分で決める。
自分で動く。
そうやって何年も、何十年も生きてきた。
その結果、仕事では非常に強い女性になります。
判断が早い。
行動力がある。
責任感がある。
経済的にも自立している。
問題が起きても感情だけで動かず、冷静に対処できる。
周囲から見れば、
「何でも一人でできる女性」
「しっかりした女性」
「強い女性」
そう見えるかもしれません。
しかし――。
婚活では、その「強さ」が、時としてご本人を疲れさせてしまうことがあります。
婚活まで「仕事モード」になっていませんか?
仕事で成果を出してきた方には、一つの特徴があります。
問題があれば、原因を考える。
原因が分かれば、改善策を考える。
そして行動する。
仕事では、とても大切な能力です。
ところが婚活では、同じ方法が必ずしもうまくいくとは限りません。
たとえば、お見合いが成立しなかったとします。
すると、
「何が悪かったのでしょうか」
「条件を変えた方がいいですか」
「写真でしょうか」
「プロフィールでしょうか」
「もっと申し込んだ方がいいですか」
と、すぐに原因を分析したくなります。
お見合いをして、お相手から交際希望のお返事が来なければ、
「私のどの発言がいけなかったのでしょうか」
「改善すべきところを教えてください」
と考える。
もちろん、振り返ることは大切です。
プロフィールを見直したり、服装を工夫したり、会話の仕方を少し変えたりすることで、ご縁につながることもあります。
しかし、婚活には仕事とは決定的に違うところがあります。
人の気持ちは、努力だけではコントロールできない。
ということです。
どれほど素敵な人でも、全員から選ばれることはありません。
そして、自分自身も、条件が良いからという理由だけで、すべての人を好きになれるわけではありません。
恋愛や結婚には、
「なぜか話しやすい」
「なぜか安心する」
「また会いたいと思った」
という、数字では説明できない相性があります。
だから婚活を、仕事と同じように「成果を出さなければならないプロジェクト」にしてしまうと、とても苦しくなってしまうのです。
「私は一人でも生きていける」は、素晴らしいこと
50代、60代で婚活をされている女性の中には、経済的にも精神的にも自立されている方がたくさんいらっしゃいます。
ご自身で仕事を持ち、ご自宅を持ち、資産形成もしっかりされている。
お子様も成長し、自分自身の生活も確立されている。
つまり、
「結婚しなければ生きていけない」
という状態ではありません。
私は、これは大きな強みだと思っています。
生活のためだけに結婚する必要がないからです。
だからこそ、
「誰でもいいから結婚したい」
ではなく、
「この人となら、今の人生がもっと豊かになる」
と思える人を選ぶことができます。
一人でも生きていける。
でも、二人ならもっと楽しい。
一人でも食事はできる。
でも、
「今日こんなことがあったよ」
と話しながら一緒に食卓を囲めたら、もっと温かい。
一人でも旅行には行ける。
でも、美しい景色を見た瞬間に、
「きれいだね」
と言える人が隣にいたら、思い出は少し違ったものになるかもしれない。
一人でも病院には行ける。
けれど体調を崩した時に、
「大丈夫?」
と気遣ってくれる人がいるだけで、心細さはずいぶん違います。
結婚は、「一人では生きられない人」がするものではありません。
むしろ人生の後半では、
一人でも生きていける二人が、それでも一緒にいたいと思える関係
こそ、とても豊かなパートナーシップなのではないでしょうか。
恋愛では「正しさ」より「心地よさ」が大切なことがある
仕事では、正しい判断を求められます。
数字が違えば修正する。
契約内容が違えば確認する。
部下が間違っていれば指摘する。
経営判断を誤れば、会社に影響が出ます。
ですから、仕事のできる方ほど、
「正しいか、間違っているか」
を瞬時に判断する習慣が身についています。
しかし、夫婦の関係では、必ずしも正しさだけで物事は進みません。
たとえば、ちょっとした意見の違い。
「私はこう思う」
「いや、僕はこう思う」
どちらにも、それぞれの理由がある。
そんな時に必要なのは、相手を論破することではありません。
「そういう考え方もあるんだね」
と、一度受け止めることかもしれません。
そしてこれは、女性だけに求められることではありません。
男性にも同じことが言えます。
自分の価値観を押しつける男性。
何でも自分のやり方に従わせようとする男性。
女性の仕事や生き方を尊重しない男性。
そういう相手に対してまで、女性が我慢する必要はありません。
大切なのは、
どちらかが勝つ関係ではなく、二人が心地よくいられる関係。
なのです。
仕事では戦える。でも、家に帰ったら戦いたくない
長年仕事を頑張ってきた女性から、ときどきこんな言葉を聞きます。
「もう家に帰ってまで気を遣いたくないんです」
私は、とてもよく分かる気がします。
仕事では、常に判断を求められる。
人間関係にも気を遣う。
お客様にも気を遣う。
社員にも気を遣う。
取引先にも気を遣う。
一日中、頭を使い続ける。
そんな生活を何十年も続けてきた人が、パートナーの前でも常に緊張していなければならないとしたら、それは安らぎではありません。
結婚相手とは、本来、
鎧を脱げる相手
であってほしいと思います。
「今日は疲れた」
と素直に言える。
何も話さず隣にいても気まずくない。
失敗した話をしても馬鹿にされない。
弱音を吐いても、
「そんなことでどうする」
ではなく、
「大変だったね」
と言ってくれる。
そんな相手です。
50代、60代からの結婚では、私はこの「安心感」が非常に大切だと思っています。
条件が良い人と、「自分が幸せになれる人」は同じとは限らない
婚活では、どうしても条件に目が向きます。
年齢。
年収。
職業。
学歴。
住んでいる場所。
資産。
家族構成。
もちろん、どれも無視できない大切な情報です。
特に人生経験を重ねた年代では、将来の生活設計もありますから、現実的な条件を確認することは必要です。
しかし、条件表だけでは分からないことがあります。
その人と一緒に食事をして、楽しいか。
話を最後まで聞いてくれるか。
店員さんへの態度はどうか。
自分の話ばかりしないか。
こちらの仕事を尊重してくれるか。
何か意見が違った時、感情的にならず話し合えるか。
そして何より、
その人の隣にいる時の自分を、自分自身が好きでいられるか。
これは、とても大切です。
条件は申し分ない。
でも、会うたびに疲れる。
言葉を選ばなければならない。
機嫌を損ねないよう気を遣う。
自分を小さく見せなければならない。
それでは、せっかく結婚しても幸せとは言いにくいでしょう。
反対に、プロフィールだけを見た時には、
「絶対にこの人」
と思わなかった相手でも、実際に会ってみると、
「不思議と話しやすかった」
「気がついたら2時間経っていた」
「自分らしく話せた」
ということがあります。
婚活では、こういう感覚を大切にしてほしいのです。
「弱さを見せられる」は、弱いということではない
強い女性ほど、人に頼ることが苦手です。
「自分でやった方が早い」
「迷惑をかけたくない」
「弱いところを見せたくない」
そう考えてしまいます。
でも、パートナーシップは、一人で完結するものではありません。
時には、
「これ、お願いしてもいい?」
と言う。
「今日はちょっと疲れた」
と言う。
「実は少し不安なの」
と言う。
それは依存ではありません。
信頼です。
何でも一人でできる人が、あえて誰かを頼る。
それは、相手を信じているからこそできることです。
本当に相性の良い男性とは、そんな自分を見せても関係が壊れない相手です。
むしろ、
「頼ってくれて嬉しい」
と思ってくれる人かもしれません。
50代・60代の婚活で大切にしたい3つの感覚
人生の後半を共に歩む相手を考える時、私は条件と同じくらい、次のような感覚を大切にしていただきたいと思っています。
一緒にいて疲れないこと。
沈黙があっても焦らない。
自分を必要以上に良く見せなくてもいい。
「次は何を話そう」と必死に考えなくてもいい。
そんな自然な時間を過ごせることです。
お互いを尊重できること。
これまで歩んできた人生を否定しない。
仕事も、家族も、友人も、趣味も大切にできる。
「結婚したのだから全部こちらに合わせて」
ではなく、お互いの人生を尊重しながら二人の新しい形を作っていける。
そして、
安心して弱さを見せられること。
人生には、良い時ばかりではありません。
病気をすることもあります。
仕事で悩むこともあります。
親の介護など、家族の問題が出てくることもあるでしょう。
そんな時に、完璧な自分を演じ続けなければならない相手ではなく、
「今日はちょっとしんどい」
と言える相手。
人生の後半では、そういう関係こそ大きな支えになると思います。
「選ばれる婚活」から「選ぶ婚活」へ
婚活を始めると、多くの方が無意識に、
「相手から選んでもらえるだろうか」
と考えます。
申し込みをして、断られる。
紹介されても、お見合いが成立しない。
お見合いをしても、次につながらない。
そういう経験が重なると、
「私には価値がないのではないか」
と感じてしまうことがあります。
しかし、それは違います。
婚活で一人の方と成立しなかったことと、その人自身の価値は、まったく別の話です。
恋愛には相性があります。
タイミングもあります。
お相手にも希望があります。
こちらにも希望があります。
ですから、一つの「お断り」は、
あなた自身への評価ではなく、その二人の組み合わせが今回は成立しなかった
というだけのことです。
特に、これまで仕事も家庭も頑張ってきた女性には、
「選ばれなければ」
という発想から少し離れていただきたいと思います。
これからは、
「私は、この人と一緒にいると幸せだろうか」
と考えていいのです。
誰かに認めてもらうための婚活ではありません。
これからの自分の人生を、誰と歩きたいのかを考える婚活です。
「もっと頑張る」ではなく、「少し力を抜く」
真面目な方ほど、婚活でも頑張ります。
もっと申し込もう。
もっと会おう。
もっと綺麗になろう。
もっと会話を上手にしよう。
もっと相手に好かれるようにしよう。
努力すること自体は悪くありません。
けれど、婚活で疲れてきた時に必要なのは、
「さらに頑張ること」
ではなく、
「少し力を抜くこと」
かもしれません。
お見合いだからと完璧に話さなくていい。
少しくらい言葉に詰まってもいい。
知らないことは、
「それ、知らないので教えてください」
と言えばいい。
相手に好かれることだけを考えるのではなく、
「私はこの人と一緒にいて心地よいかな」
と、自分の気持ちにも耳を傾けてみる。
それだけで、婚活は少し違って見えてきます。
「強い女性だから難しい」のではありません
ときどき、
「私みたいに仕事をしている女性は、男性から敬遠されますよね」
とおっしゃる方がいます。
そんなことはありません。
仕事ができること。
経済的に自立していること。
自分の考えを持っていること。
人生経験が豊富なこと。
どれも素晴らしい魅力です。
問題があるとすれば「強いこと」ではありません。
その強さを理解し、尊重できない相手を選んでしまうことです。
あなたの仕事を応援してくれる男性。
あなたが積み重ねてきた人生を面白いと思ってくれる男性。
自分より収入が高い、仕事ができるということだけで競争心を持たない男性。
そして、外では強く頑張っているあなたに、
「家では無理しなくていいよ」
と言える男性。
そんな方はいます。
だから、自分を小さく見せる必要はありません。
「男性に好かれるために、できないふりをした方がいい」
そんな婚活をする必要もありません。
あなたの強さは、そのままでいい。
ただし、恋愛の場では、強さだけでなく、
優しさ、寂しさ、可愛らしさ、頼りたい気持ち、甘えたい気持ち
そんな自分自身の別の一面にも、居場所を作ってあげてほしいと思います。
これまで十分に頑張ってきたからこそ
50代、60代の婚活 には、若い頃とは違う良さがあります。
若い頃は、
「どんな家庭を作るか」
「子どもはどうするか」
「仕事をどうするか」
「家をどうするか」
未来を一から作るための結婚という側面が大きかったかもしれません。
しかし、人生経験を重ねてからの結婚は少し違います。
それぞれが、すでに一つの人生を歩いてきています。
仕事もある。
家族もいる。
友人もいる。
大切にしてきた生活もある。
成功もあれば、失敗もある。
嬉しかったことも、悲しかったこともある。
それらすべてを持った二人が出会い、
「これから先を一緒に歩いてみませんか」
と手を取り合う。
私は、それが大人の結婚の魅力だと思っています。
相手の人生を奪うのではなく、尊重する。
自分の人生も捨てない。
そのうえで、二人だから生まれる新しい時間を楽しむ。
そんな結婚です。
仕事では戦える。でも、恋愛まで戦わなくていい。
仕事では、これからも戦わなければならない場面があるでしょう。
経営者なら決断しなければならない。
責任ある立場なら、厳しいことを言わなければならない時もある。
自分が前に立たなければならないこともあります。
でも、一日の仕事を終えたあと。
家に帰った時。
大切な人と食事をする時。
旅行に出かけた時。
人生について語り合う時。
そこまで戦わなくていいのです。
「この人の前では、少し肩の力を抜ける」
「何でも自分一人で決めなくていい」
「今日は疲れた、と言える」
「何もしない時間も一緒に楽しめる」
そんな相手が一人いるだけで、人生はずいぶん違って見えるのではないでしょうか。
これまで仕事でも家庭でも、十分に頑張ってきた女性だからこそ。
これからの人生では、
頑張らなくても愛される時間
があっていいと思います。
婚活は、自分の価値を証明する場所ではありません。
誰かと競争する場所でもありません。
そして、誰かに選んでもらうためだけの場所でもありません。
これからの人生を、
「この人と一緒なら、もう少し楽しく、もう少し穏やかに歩いていけそう」
そう思える人を見つけるための時間です。
だから私は、婚活のお手伝いをする時、その女性の条件や肩書きだけを見るのではなく、
「この方は、どんな男性の隣にいる時に一番自然な笑顔になれるだろう」
ということを大切にしています。
社会では強くてもいい。
仕事では誰より決断力があってもいい。
会社では弱音を吐けなくてもいい。
でも、愛する人の前でまで、ずっと鎧を着ている必要はありません。
仕事では戦える。
でも――
恋愛まで、戦わなくていい。
これまで十分に頑張ってきたあなたには、
戦うための相手ではなく、
一緒にいることで、戦わなくていい自分に戻れる相手
を選んでほしい。
それが、50代、60代からの婚活で見つけることのできる、本当の意味で豊かなパートナーシップなのではないでしょうか。
