1on1やデートで“信頼を積み上げる”対話の進め方
「なんでこの人と話すと、素直になれるんだろう?」
――(悠人・32歳・営業職・独身)
週に1度の1on1ミーティング。
直属の上司・岸本課長は、特別なアドバイスをするわけでもなく、深掘り質問を繰り返すわけでもない。
ただ、淡々と会話を重ねてくれる。
「調子はどう?」
「あの提案、けっこう面白かったよ」
「最近、なにか気になってることある?」
悠人は、毎回終わったあと、不思議な感覚になる。
“話したいことを自分から話せた”という充実感。
そして、**「この人は俺の味方でいてくれる」**という安心感。
一方、30代の独身女性・千紘は、マッチングアプリで出会った彼と2回目のデートに向かっていた。
初回の会話は盛り上がったけれど、2回目では「もっとちゃんと話したい」と思っていた。
でも、いざ向き合ってみると――
沈黙が多くなる。話題がうまく続かない。
“もっと関係を深めたい”と思っているはずなのに、なぜか距離を感じてしまう。
“信頼の会話”に、特別なトーク力はいらない
1on1ミーティングでも、恋愛のデートでも、
会話の目的は「成果を出す」ことでも「盛り上げる」ことでもありません。
“お互いに安心して、自然に本音を話せる空気”をつくること。
その空気が、信頼を育て、次のステップにつながる関係性をつくります。
“信頼を積み上げる会話”の3ステップ
【STEP1】相手の「安心領域」に入るあいさつを
「今日は忙しかった?時間ありがとうね」
「この前の話、ちょっと気になってたんだ」
→会話の入口で、相手の“緊張”を溶かすひと言を添えるだけで、心の扉が開きやすくなる。
【STEP2】話すより「聞く」を優先する
「それ、どんな気持ちだった?」
「うんうん、それで?」
→“話題を変えずに掘る”ことが、相手の自己開示を引き出します。
アドバイスや結論を急がないことがポイント。
【STEP3】“小さな感想”をはさむ
「それ、いいね」
「わかる、それ私もある」
「それを大事にしてるの、素敵だね」
→“聞いてるよ”を伝えるだけでなく、「あなたの話に共感している」と伝わるリアクションが大切。
1on1でも恋愛でも「続く会話」には“余白”がある
悠人の上司は、沈黙を恐れなかった。
黙って相手の言葉を待ち、遮らず、焦らず。
それが「圧をかけない対話」になっていた。
千紘は、3回目のデートでふと気づいた。
「この人、沈黙があってもスマホ見たりしない。ちゃんと、待ってくれてるんだ」
その瞬間から、少しずつ自分の話をするようになったという。
信頼は「会話の質」ではなく「姿勢」で築かれる
☆相手の話を“全部聞こう”という構え
☆相手の“話したいタイミング”を尊重する余白
☆相手の“感じていること”に目を向ける視線
これらの姿勢が、「この人なら、ちゃんと聞いてくれる」という安心を生む。
それが、“信頼される話し手”の本質です。
✔この章の“ことば力”ワーク
Q. あなたが「話しやすかった」と感じた相手は、どんな人でしたか?
Q:その人の会話のどんな点が、安心感につながりましたか?
Q:最近、誰かの話を最後まで聞けた場面はありましたか?
Q:明日の1on1やデートで、1つだけ意識したいことは何ですか?
沈黙も、笑顔も、相づちも、すべてが“伝える力”になります。
信頼は、言葉の外側にも宿っているのです。