婚活をしている人にとって、「真剣交際に進む」という言葉には、少し特別な響きがあります。 お見合いから始まり、仮交際になり、何度か食事をし、休日を一緒に過ごし、少しずつ相手のことが分かってくる。 そして、ある日、カウンセラーからこんなことを尋ねられます。 「そろそろ真剣交際について考えてみませんか」 その瞬間、胸の中に二つの気持ちが生まれる人は少なくありません。 一つは、嬉しさです。 「この人とここまで来たんだ」 という静かな喜び。 もう一つは、不安です。 「本当に、この人でいいのだろうか」 という問いです。 この「嬉しい」と「怖い」が同時に存在するところに、真剣交際という段階の難しさがあります。 恋愛だけを目的とする交際なら、「好きだから一緒にいたい」という気持ちだけでも進めるでしょう。 しかし結婚相談所における真剣交際は、その先に「結婚」という現実があります。 生活があります。 お金があります。 家族があります。 仕事があります。 病気になる日もあります。 意見が合わない夜もあります。 そして何より、 「この人と人生を分け合っていく」 という選択があります。 だからこそ、真剣交際に進むタイミングとは、単に相手を好きになった瞬間ではありません。 まして、 「3回会ったから」 「1か月経ったから」 「相手から言われたから」 という暦だけで決まるものでもありません。 ショパン・マリアージュでは、真剣交際への移行を、「相手を評価する婚活」から、「二人の未来を一緒に考える婚活」へ変わる瞬間 だと捉えています。 プロフィールを眺めて条件を比較しているうちは、まだ相手は「候補者」です。 お見合いで話しているときも、心のどこかでは、 「この人は私に合うだろうか」 と考えています。 しかし真剣交際に近づくにつれて、問いの形が少しずつ変わります。 「この人は私に合うだろうか」 から、 「この人となら、違いがあったときにも話し合えるだろうか」 へ。 さらに、 「私を幸せにしてくれるだろうか」 から、 「二人で幸せをつくっていけるだろうか」 へ。 この問いの変化こそが、真剣交際への心の準備なのです。
第1章 真剣交際とは「結婚を決めること」ではない
真剣交際を前にした会員の方から、よく聞く言葉があります。 「真剣交際に入ったら、もう結婚しなければならないんですよね」 しかし、これは少し違います。 真剣交際は、 「この人と結婚します」 という最終決定ではありません。 むしろ、 「この人との結婚を、他の人と比較せずに真剣に考えてみます」 という段階です。 仮交際では、一般的に複数のお相手との交際が可能です。 Aさんとも会う。 Bさんとも会う。 場合によってはCさんとも会う。 それぞれと食事をしながら、 「誰と一番合うのだろう」 と考えています。 これは婚活において必要な過程です。 ところが、人間の心には面白い特徴があります。 選択肢が多すぎると、深く考えられなくなるのです。 Aさんと会っていると、 「Bさんのほうが話しやすかったかもしれない」 と思う。 Bさんと会っていると、 「でもAさんのほうが年収は高い」 と考える。 Cさんと会えば、 「Cさんは趣味が合う」 となる。 こうして比較を続けていると、相手そのものを見ることが難しくなります。 真剣交際とは、この比較から一度降りることでもあります。 「もっと良い人がいるかもしれない」 という婚活特有の誘惑から少し離れて、 目の前にいる一人の人間を見る。 その人と結婚したら、どんな朝になるだろう。 疲れて帰宅したとき、どんな会話をするだろう。 休日には何をして過ごすだろう。 意見が違ったとき、どんなふうに話し合うだろう。 子どもを望むなら、そのことをどう考えるだろう。 親との関係はどうなるだろう。 住む場所は。 仕事は。 家計は。 家事は。 こうした現実を、初めて「二人の問題」として考えてみる。 それが真剣交際です。 つまり、真剣交際とは結婚のゴールテープではありません。 結婚という舞台に上がる前の、最後のリハーサルに近いのです。 そしてリハーサルだからこそ、違和感が見つかることもあります。 「思っていた人と違った」 と気づく場合もあります。 それでよいのです。 真剣交際は、後戻りしてはいけない道ではありません。 むしろ、結婚してから気づくより、その前に気づくほうがはるかに誠実です。
第2章 真剣交際に進む「正解の回数」は存在するのか
よくある質問の一つが、 「何回デートしたら真剣交際に進むのが普通ですか」 というものです。 3回でしょうか。 5回でしょうか。 7回でしょうか。 結論から言えば、「何回なら正解」という数字はありません。 けれども、多くの人にとって、3回から6回ほど会ったあたりから、真剣交際を意識し始めることが多いでしょう。 大切なのは回数そのものではなく、 その回数の中で何を知ることができたか です。 例えば、5回会っていても、 毎回同じレストランで2時間ほど食事をし、 仕事の話。 趣味の話。 旅行の話。 最近観た映画の話。 それだけで終わっていたとします。 楽しいでしょう。 しかし結婚生活については、ほとんど分かっていません。 一方、3回しか会っていなくても、 仕事に対する考え方。 住む場所。 家庭についての価値観。 お金の使い方。 休日の過ごし方。 家族との距離感。 困ったときの考え方。 こうした話を自然にできている二人なら、かなり深いところまで進んでいる可能性があります。 つまり、 交際回数よりも、心の会話の深さ を見るべきなのです。 もちろん、焦る必要もありません。 「3回目だから真剣交際を申し込まなければ」 と考えると、恋愛がスケジュール管理になってしまいます。 婚活には期限があります。 しかし、心には締切だけでは動かない部分があります。 ショパンの音楽もそうです。 譜面にはテンポの指定があります。 けれど、美しい演奏はメトロノームだけでは生まれません。 わずかな間。 息遣い。 音の余韻。 相手の呼吸。 そうしたものが音楽をつくります。 婚活も同じです。 「3回目」「4回目」という数字は目安にはなります。 しかし、その二人にしか分からないテンポがあります。
第3章 「ドキドキしない」は真剣交際に進まない理由になるのか
ある36歳の女性、仮に美香さんとしましょう。 美香さんは会社員で、恋愛経験もありました。 これまで付き合った男性は、どちらかというと華やかなタイプでした。 会った瞬間から話が面白い。 服装も洗練されている。 デートの店選びも上手。 恋愛が始まると、毎日LINEが来る。 「会いたい」 「好きだよ」 という言葉も多い。 しかし、なぜか長続きしませんでした。 結婚を考えると、相手が仕事を優先したり、突然連絡が減ったりする。 そんな経験を繰り返していました。 結婚相談所に入会し、38歳の健一さんと出会いました。 健一さんは技術職。 派手さはありません。 LINEも短い。 「今日はありがとうございました。楽しかったです」 くらい。 レストランも超高級店ではなく、静かで落ち着いた店を選びます。 3回目のデートのあと、美香さんは言いました。 「いい人なんです。でも、ドキドキしないんです」 婚活では、この言葉が非常によく登場します。 ここで大切なのは、 「ドキドキしないならやめましょう」 とも、 「ドキドキなんて必要ありません」 とも決めつけないことです。 そのドキドキの正体を考えてみる必要があります。 美香さんに尋ねました。 「健一さんと会うのは嫌ですか」 「嫌ではありません」 「また会いたいですか」 「それは思います」 「一緒にいると緊張しますか」 「むしろ楽です」 「沈黙になると気まずいですか」 「いいえ。あまり気にならないです」 「何か話したいことがあるとき、言えそうですか」 「たぶん言えます」 そこで、一つの問いを投げかけました。 「美香さんがこれまで感じてきた“ドキドキ”は、恋だったのでしょうか。それとも、“この人を失うかもしれない不安”も含まれていなかったでしょうか」 美香さんは、しばらく黙りました。 恋愛における高揚感のすべてが悪いわけではありません。 ときめきは美しいものです。 しかし、 返信が来るだろうか。 嫌われていないだろうか。 他の女性を好きになるのではないか。 次に会えるだろうか。 という不安も、身体には「ドキドキ」として現れます。 一方、結婚に向いている関係では、 「激しい高揚」より、 「安心」 が先に生まれることがあります。 美香さんはその後、健一さんとの交際を続けました。 5回目のデート。 二人で海の見えるカフェに行った帰り、突然雨が降ってきました。 健一さんは自分の上着を美香さんに渡しました。 ドラマのような大げさな行動ではありません。 そして駅に着いたとき、 「寒くなかった?」 と聞きました。 その夜、美香さんはカウンセラーにメッセージを送りました。 「今日初めて、“この人と暮らしたら安心するかもしれない”と思いました」 恋が大きな花火として始まる人もいます。 しかし、結婚につながる愛は、暖炉の火のように始まることもあります。 強烈ではない。 けれど、消えにくい。 真剣交際に進むときに必要なのは、 「胸が激しく高鳴るか」 だけではありません。 むしろ、 「この人の前で、自分の呼吸が自然になっているか」 という感覚を大切にしてほしいのです。
第4章 真剣交際へ進む5つの心のサイン
真剣交際に進むタイミングを考えるとき、ショパン・マリアージュでは、特に5つの心の変化を大切にします。 第1は、 「また会いたい」から「もっと知りたい」へ変わっていること。 楽しいから会いたい。 食事が美味しいから会いたい。 それも大切です。 しかし真剣交際に近づくと、 「この人はどんな家庭で育ったのだろう」 「仕事でつらいときはどうする人なのだろう」 「結婚したらどんな家をつくりたいのだろう」 と、その人の内側に関心が向き始めます。 第2は、 良いところだけでなく、小さな欠点も見えていること。 完璧に見える段階では、まだ相手を十分に知らない可能性があります。 「ちょっと話が長いな」 「店員さんに注文するとき少し声が小さいな」 「服にはあまり関心がないらしい」 「LINEの返信が遅い」 そんな小さな欠点が見え始めても、 「まあ、それもこの人かな」 と思える。 この感覚は重要です。 結婚とは、長所を愛することだけではありません。 短所と共存できるかを考えることでもあります。 第3は、 少し言いにくいことを話せるようになっていること。 「実は私は朝が苦手なんです」 「休日は一人になる時間も欲しいです」 「親との関係で少し心配があります」 「将来、仕事を続けたいと思っています」 こうした話ができる。 そして相手が否定せず聞いてくれる。 真剣交際には、この「安心して弱さを見せられる感じ」が必要です。 第4は、 相手が自分をどう評価しているかより、自分が相手を大切にしたいと思い始めること。 仮交際の前半では、 「私のことをどう思っているのだろう」 という不安があります。 しかし関係が深まると、 「この人が疲れているなら、今日は無理に会わなくてもいい」 「この人が喜ぶことをしたい」 という気持ちが生まれます。 これは恋愛が、「承認されたい」という世界から、「相手を思いやる」という世界へ移った証拠です。 そして第5。 もっとも重要なのが、 「この人なら問題が起きない」ではなく、「この人なら問題が起きても話せそう」と思えること。 結婚生活に問題のない夫婦はありません。 価値観の違い。 家事。 お金。 親。 仕事。 子育て。 時間。 健康。 必ず何か起きます。 幸福な結婚をする人は、 「問題の起きない相手」 を探した人ではありません。 問題が起きたとき、一緒に向き合える相手を選んだ人 なのです。
第5章 条件はいつまで確認すればよいのか
婚活では条件確認が必要です。 年齢。 居住地。 職業。 収入。 婚姻歴。 子どもを望むか。 転勤。 親との同居。 仕事を続けるか。 これらを無視して、 「愛があれば何とかなる」 と言うことはできません。 現実を見ない恋愛は、結婚した瞬間に苦しくなることがあります。 しかし条件だけを見続けても、結婚には到達できません。 ここに婚活の難しいところがあります。 ある41歳の男性、隆さんは、とても慎重な人でした。 お見合い相手を選ぶときも、 年齢。 学歴。 職業。 居住地。 趣味。 家族構成。 あらゆる項目を細かく確認しました。 仮交際になった39歳の女性、由紀さんとは気が合いました。 会話も楽しい。 価値観も近い。 しかし隆さんは、毎回のように新しい確認事項を探しました。 「料理は週に何回しますか」 「家計管理はどう考えていますか」 「旅行は年に何回くらい行きたいですか」 「車は買い替える予定ですか」 「老後はどこに住みたいですか」 確認すること自体が悪いのではありません。 しかし4回目、5回目になっても、隆さんの心は面接官の席から動いていませんでした。 由紀さんは徐々に疲れていきました。 そして交際終了を申し出ました。 理由は、 「私という人間を知りたいのではなく、条件を確認されている気がしました」 というものでした。 隆さんはショックを受けました。 そこでお伝えしたのは、 「条件確認には終わりがあります。でも、人間を知ることには終わりがありません」 ということです。 結婚相手の条件は、ある程度確認したら、 次は、 その条件を持った人が、どんな心で人生を生きているのか を見る必要があります。 「年収600万円」 という数字の向こうに、 どんな仕事観があるのか。 「料理ができる」 という項目の向こうに、 食卓をどう考えているのか。 「親と同居しない」 という条件の向こうに、 家族とどんな距離を保ちたいのか。 プロフィールに書けることには限界があります。 結婚とは、プロフィール同士が暮らすことではありません。 人間同士が暮らすことです。
第6章 「好きかどうか分からない」という迷いをどう考えるか
真剣交際を前にして、 「好きかどうか分からない」 という人も非常に多くいます。 この言葉を聞いたとき、私たちはすぐに、 「好きではない」 と解釈しがちです。 しかし、必ずしもそうではありません。 「好きか分からない」の中には、さまざまな気持ちが混じっています。 例えば、 恋愛経験が少なく、何を「好き」と呼ぶのか分からない。 過去の恋愛のような強烈な感情がなく戸惑っている。 結婚を意識すると怖くなる。 選択を間違えたくない。 もっと良い人がいるのではないかと思う。 相手は良い人なので、断ったら後悔しそう。 こうした心理が一つの言葉にまとめられて、 「好きか分からない」 となっていることがあります。 そこで、「好きですか」と聞く代わりに、別の質問をしてみます。 「会えなくなったら、少し寂しいですか」 「嬉しいことがあったとき、話したいと思いますか」 「相手が困っていたら力になりたいと思いますか」 「相手の前で、自分を大きく見せなくてもいいですか」 「一緒にいる未来を想像したとき、強い拒否感はありますか」 「もう一度会いたいと思いますか」 こうして聞いていくと、 「好き」という大きな言葉では見えなかったものが見えてきます。 ある33歳の女性は、 「好きか分かりません」 と言っていました。 しかし、 「会えなくなったらどうですか」 と聞くと、 「それは、かなり寂しいと思います」 と答えました。 「何か嬉しいことがあったら?」 「彼に言いたいです」 「つらいことがあったら?」 「たぶん彼なら聞いてくれると思います」 そこで彼女は笑いました。 「それって、好きなんでしょうか」 恋愛感情は、必ずしも雷のように落ちてくるものではありません。 気づいたら、その人が日常の中にいる。 その人に話したくなる。 その人が笑うと嬉しい。 その人が落ち込んでいると気になる。 こうした小さな感情の積み重ねも、立派な「好き」です。 むしろ結婚という長い時間を考えるなら、この静かな好意は、とても強い土台になります。
第7章 真剣交際に進む前に必ず話しておきたいこと
心だけで進んでしまうと、真剣交際に入ってから現実的な違いが突然見つかることがあります。 だからこそ、仮交際の中盤から後半では、少しずつ「結婚後の生活」に触れていく必要があります。 ただし、面接のように質問を並べる必要はありません。 例えば住む場所。 「結婚したらどこに住みますか」 と聞くより、 「将来はどんな場所に住むのが理想ですか」 と聞いたほうが自然です。 仕事についても、 「結婚後も仕事を続けますか」 ではなく、 「今の仕事はこれからも続けたいと思っていますか」 と話す。 子どもについても、 単に「欲しい・欲しくない」を確認するだけではありません。 子どもを持つことをどう考えているのか。 不妊治療についてはどう思うか。 もし授からなかった場合、二人で生きる人生をどう考えるか。 そこまで話せる二人なら、かなり深いところへ進んでいます。 お金についても大切です。 年収だけを見るのではありません。 何にお金を使うと幸せを感じるか。 貯蓄をどう考えているか。 家を買いたいか。 賃貸がよいか。 旅行に使いたいか。 趣味に使いたいか。 奨学金やローンはあるか。 重要なのは「金額」よりも「お金に対する意味」です。 500円のコーヒーを高いと思う人と、安いと思う人がいる。 それは収入だけでは決まりません。 育った家庭。 経験。 不安。 価値観。 その人の人生が表れます。 親との関係も同じです。 「親と仲が良い」という言葉一つを取っても、 毎週会うのか。 年に数回なのか。 電話は毎日なのか。 介護が必要になったらどうするのか。 その意味は人によって違います。 だからこそ、 条件を一致させることより、違いについて話せる関係をつくること のほうが重要なのです。
第8章 ケース1――「条件は満点なのに、心が動かない」37歳女性の場合
37歳の恵さんは、結婚相談所に入る前、友人から何度も言われていました。 「条件を下げたほうがいいよ」 しかし恵さん自身は、条件が高いとは思っていませんでした。 希望していたのは、 年齢35歳から43歳。 安定した仕事。 大学卒。 年収500万円以上。 できれば身長170センチ以上。 タバコを吸わない。 清潔感がある。 自分と同じくらい旅行が好き。 そんな条件でした。 やがて39歳の男性とお見合いをしました。 ほぼすべての希望を満たしていました。 会社員。 年収700万円。 穏やか。 清潔感がある。 旅行好き。 会話も問題ない。 仮交際になりました。 ところが4回会っても、恵さんは気持ちが上がりません。 「何が嫌なんですか」 と尋ねると、 「嫌なところはないんです」 「では何が気になりますか」 「分からないんです」 そこで、デート中の具体的な場面を聞いていきました。 すると、一つのことが浮かびました。 彼はとても論理的でした。 恵さんが、 「仕事でちょっと嫌なことがあって」 と言うと、 「それなら上司にこう言えばいいんじゃない?」 と解決策を出します。 恵さんが、 「最近ちょっと疲れてて」 と言うと、 「睡眠時間を増やしたほうがいいよ」 と答えます。 悪意はありません。 むしろ親切です。 しかし恵さんが本当に欲しかったのは、 「それは大変だったね」 という一言でした。 ここで初めて、 「条件は合っている。でも、感情の受け止め方が合っていない」 ということが見えてきました。 彼に率直に話してみることを勧めました。 次のデートで恵さんは、 「私、何か困った話をするとき、アドバイスより最初に共感してもらえると嬉しいタイプみたい」 と言いました。 彼は驚きました。 そして、 「ごめん。良かれと思って解決しようとしてた」 と答えました。 次の週、恵さんが仕事の愚痴を少し話すと、 彼は言いました。 「それは疲れるね」 たった一言でした。 でも恵さんは、後でこう言いました。 「初めて彼のことを、近くに感じました」 そして二人は真剣交際へ進みました。 ここで重要なのは、 最初から相性が完璧だったわけではないことです。 違いを伝えたとき、相手が受け止め、修正しようとしてくれた。 これこそ結婚相手として非常に重要な資質です。
第9章 ケース2――「真剣交際を急ぎすぎた」42歳男性の場合
42歳の誠さんは、入会から半年が経ち、少し焦っていました。 お見合いは成立する。 仮交際にもなる。 しかし3回目くらいで終了になる。 そんなことが続きました。 そこへ38歳の女性、愛さんが現れました。 とても話しやすい。 初回デートも盛り上がった。 2回目も楽しかった。 誠さんは思いました。 「今度こそ逃したくない」 そして2回目のデートの終わり、 「僕は真剣交際を考えています」 と伝えました。 愛さんは驚きました。 彼女はまだ、 「感じの良い人」 くらいに考えていたからです。 その日から愛さんは、少しプレッシャーを感じるようになりました。 3回目のデートで誠さんは、 「結婚したら仕事は続けたいですか」 「子どもは何人くらい欲しいですか」 「住むなら戸建てとマンション、どちらがいいですか」 と次々尋ねました。 愛さんは交際終了を申し出ました。 誠さんにとっては、 「真剣だったから」 なのです。 しかし相手には、 「急かされている」 ように感じられました。 真剣さと焦りは似ています。 しかし違います。 真剣さとは、 相手の気持ちを尊重しながら関係を育てること。 焦りとは、 自分の不安を消すために関係を先へ進めること。 真剣交際は、 二人の心の速度がある程度そろったとき に進む必要があります。 どちらか一人だけが走っていては、二人の未来にはなりません。
第10章 ケース3――「もっと良い人がいるかもしれない病」から抜け出した35歳男性
婚活が長くなるほど陥りやすい心理があります。 「もっと良い人がいるかもしれない」 という思いです。 35歳の亮さんもそうでした。 仮交際中の女性は32歳。 明るく、穏やかで、仕事もしっかりしている。 話も合う。 しかし亮さんは、 「もう少し美人な人がいるかもしれない」 「もう少し趣味が合う人がいるかもしれない」 「もう少し年齢が若い人と成立するかもしれない」 と考えていました。 婚活アプリや相談所の検索画面には、次々と新しいプロフィールが表示されます。 人間は不思議なもので、目の前の人間より、まだ会ったことのない人のほうが完璧に見えることがあります。 なぜなら、会っていない人には欠点がないからです。 プロフィール上の人は、 不機嫌になりません。 疲れません。 言い間違いをしません。 沈黙もしません。 つまり、まだ「人間」になっていないのです。 亮さんには尋ねました。 「もし今の彼女が明日、別の男性と真剣交際に進んで、もう会えなくなるとしたらどう思いますか」 彼はしばらく黙りました。 そして、 「かなり後悔すると思います」 と言いました。 この質問は、時に心を映します。 「好きですか」 では答えられなくても、 「失ったらどう感じますか」 と聞くと、自分の気持ちが見えることがあります。 亮さんはその後、検索する時間を減らしました。 目の前の女性との時間に集中しました。 6回目のデートで二人は真剣交際へ進みました。 後に亮さんは、 「検索画面を見ている間は、永遠に決められなかったと思います」 と話していました。 婚活において、 「もっと良い人がいるかもしれない」 という問いには終わりがありません。 世界には必ず、 もっと収入が高い人。 もっと美しい人。 もっと若い人。 もっと話が面白い人。 もっと条件の良い人。 が存在するでしょう。 しかし結婚とは、 世界で一番条件の良い人を見つける競争ではありません。 自分にとって大切な一人と、関係を育てる決断 なのです。
第11章 ケース4――違和感を無視して真剣交際へ進んだ女性
ここまで真剣交際へ進むことを前向きに書いてきました。 しかし、ときには「進まない勇気」も必要です。 34歳の女性、沙織さん。 交際していた36歳の男性は、プロフィールも人柄も良好でした。 周囲から見れば、 「いい人」 でした。 しかし沙織さんには、小さな違和感がありました。 デートの店を決めるとき、 「ここがいい」 と言うと、 「でもこっちのほうが評価高いよ」 と変更される。 休日の予定でも、 「午後から会いたい」 と言うと、 「せっかくなら朝から会ったほうが効率いいよ」 と言われる。 一つ一つは小さなことです。 しかし沙織さんは、 「自分の希望が、いつも合理性で修正される」 感じを持っていました。 それでも、 「こんないい人を断ったら、次がないかもしれない」 と思い、真剣交際へ進みました。 すると問題が大きくなりました。 住む場所。 家具。 結婚式。 仕事。 彼は悪い人ではありません。 しかし、 「合理的に考えればこうでしょう」 という形で、ほぼすべてを決めようとしました。 沙織さんは徐々に、 「自分が消えていく感じ」 を持つようになりました。 最終的に二人は交際を終了しました。 彼女は後に言いました。 「仮交際のときから分かっていた気がします。でも“こんなことで断っていいのかな”と思っていました」 婚活では、大きな欠点だけを探そうとしてはいけません。 暴言。 借金。 極端な価値観。 そうした明確な問題だけが危険信号ではありません。 小さな違和感が繰り返されること も大切な情報です。 一度なら偶然です。 二度なら癖かもしれません。 三度、四度と同じ違和感が続くなら、 それは「その人との関係性」を表している可能性があります。
第12章 「安心」と「妥協」はどう違うのか
婚活をしていると、 「ときめきより安心が大事ですよ」 と言われることがあります。 すると、 「それって妥協じゃないですか」 と感じる人もいます。 この違いは非常に重要です。 安心とは、 「この人の前では自分でいられる」 という感覚です。 妥協とは、 「本当は嫌だけれど、仕方ない」 という感覚です。 似ているようで全く違います。 例えば、 「見た目は理想通りではないけれど、会うと楽しい」 なら、妥協とは限りません。 しかし、 「会いたくないけれど、条件が良いから我慢する」 なら危険です。 「話し方は派手ではないけれど、誠実さを感じる」 なら安心につながる可能性があります。 しかし、 「話していて傷つくけれど、年収が高いから我慢する」 なら妥協です。 真剣交際へ進むとき、 100点満点の人を探す必要はありません。 しかし、 自分の大切な部分を削ってまで進む必要もありません。 結婚とは、自分を小さくして相手に合わせることではありません。 二人がそれぞれ自分でありながら、少しずつ歩幅を合わせていくことです。
第13章 真剣交際の前に「一度は意見が違った経験」があるとよい理由
意外に思われるかもしれませんが、 仮交際中に一度くらい、意見の違いが起きることは悪いことではありません。 むしろ、真剣交際を判断する重要な材料になります。 なぜなら、 人の本当の人柄は、意見が一致しているときより、違ったときに現れるからです。 ある40歳男性と37歳女性のカップルがいました。 二人とも穏やかで、交際は順調でした。 ある日、旅行の話になりました。 男性は、 「旅行なら予定を全部決めて動きたい」 タイプ。 女性は、 「現地で気分に合わせて決めたい」 タイプでした。 最初は笑いながら話していましたが、 男性が、 「計画なしって時間がもったいなくない?」 と言いました。 女性は少し不愉快になりました。 そこで彼女は、 「私は予定を決めすぎると疲れるんです」 と伝えました。 男性は一瞬黙りました。 そして、 「そっか。じゃあ午前だけ決めて、午後は自由にするとかならどう?」 と言いました。 この会話は、とても象徴的です。 旅行スタイルが一致したことが重要なのではありません。 違ったときに、二人の間に第三の答えをつくれたこと が重要です。 結婚生活とは、これの連続です。 夫の答え。 妻の答え。 どちらかが勝つのではありません。 「二人の答え」をつくっていく。 この力がある二人は、結婚後に強いのです。
第14章 LINEの頻度で相性を判断してよいのか
仮交際ではLINEに悩む人が非常に多くいます。 「返信が遅い」 「文章が短い」 「自分から送らないと来ない」 「スタンプだけだった」 そこから、 「脈がないのでは」 と不安になる。 しかしLINEの使い方には、かなり個人差があります。 ある男性は、一日30回やり取りすることを愛情だと考えます。 ある女性は、1日1回で十分だと思います。 仕事中は絶対に私用スマートフォンを見ない人もいます。 LINEが苦手でも、会うととても丁寧な人もいます。 だからLINEの「量」だけで判断するのは危険です。 見るべきなのは、 関係を維持しようとする姿勢があるか です。 返信が遅くても、 「昨日は忙しくて返せなくてごめんね」 と言える。 次の予定を決めようとする。 会ったときはきちんと向き合う。 こちらが困っているときには反応する。 それなら、単にLINEの習慣が違うだけかもしれません。 逆に毎日大量にLINEが来ても、 会う約束をしない。 都合の悪い話題には答えない。 気分によって態度が変わる。 というのであれば、頻度の多さは安心材料にはなりません。 結婚生活で大切なのは、 24時間つながっていることではなく、 必要なときにつながれること なのです。
第15章 真剣交際を申し込む男性が知っておきたいこと
男性側から真剣交際を申し込むケースでは、 「ちゃんとした言葉で伝えなければ」 と緊張する人がいます。 確かに言葉は大切です。 しかし、豪華な演出は必要ありません。 大切なのは、 「なぜあなたと進みたいのか」 が伝わることです。 例えば、 「何度か会って、一緒にいると自然でいられると感じています。もっとあなたのことを知りたいし、結婚を前提に二人の関係を深めていきたいと思っています。よければ真剣交際に進んでいただけませんか」 こうした言葉で十分です。 避けたいのは、 「そろそろ時期なので」 「相談所から言われたので」 「他の人に取られたくないので」 という伝え方です。 真剣交際は制度上の手続きである前に、 一人の人間を選ぶ行為です。 相手は、 「私だから選ばれた」 と感じたいのです。 これは女性から意思を伝える場合も同じです。 「私はあなたと向き合ってみたい」 という気持ちこそが本質です。
第16章 真剣交際を受ける女性が「まだ100%好きではない」とき
相手から真剣交際を申し込まれた。 でも、自分の気持ちはまだ100%ではない。 このとき、 「100%好きになるまで待つべきでしょうか」 という相談があります。 ここで重要なのは、 真剣交際が「結婚の誓約」ではないということです。 例えば現在の気持ちが、 嫌ではない。 会いたい。 もっと知りたい。 人として尊敬できる。 安心する。 結婚の可能性を感じる。 という状態なら、 100%の恋愛感情がなくても、真剣交際へ進む選択は十分あり得ます。 一方で、 会うことが苦痛。 触れられることに強い抵抗がある。 話すたびに疲れる。 価値観に重大な違いがある。 相手に恐怖を感じる。 という場合は、 「そのうち好きになるかもしれない」 だけで進まないほうがよいでしょう。 重要なのは、 現在の感情の強さより、気持ちが育っている方向 です。 3回目より5回目。 5回目より6回目。 少しずつ近くなっている。 ならば、愛情は育っている可能性があります。 逆に、 会うほど気持ちが下がる。 違和感が増える。 なら、それも一つの答えです。
第17章 「結婚したら幸せにしてくれそう」は危険な問い
婚活で、 「この人なら私を幸せにしてくれそう」 という言葉を聞くことがあります。 もちろん、優しい人と結婚したい。 大切にしてくれる人を選びたい。 それは自然です。 しかし、この言葉の中に、 「幸せにしてもらう」 という期待が強すぎると、結婚後に苦しくなることがあります。 相手がいつも優しくしてくれなければ不満になる。 自分を楽しませてくれなければ愛されていないと感じる。 自分の不安を解消してくれなければ失望する。 しかし、相手も一人の人間です。 疲れます。 落ち込みます。 余裕を失う日もあります。 だから真剣交際へ進むときは、問いを変えてみてください。 「この人は私を幸せにしてくれるか」 ではなく、 「この人となら、一緒に幸せをつくっていけるか」 と。 この違いは大きいのです。 前者では、幸福の責任が相手にあります。 後者では、二人にあります。
第18章 ショパンの音楽に学ぶ「間」の大切さ
ショパンの音楽には、美しい「間」があります。 音符だけ追えば同じ曲でも、 演奏者によって、まったく違う世界になります。 急ぎすぎれば、旋律は息苦しくなる。 ためすぎれば、流れを失う。 大切なのは、 次の音へ進む直前の、わずかな呼吸です。 婚活にも同じ瞬間があります。 お見合い。 仮交際。 真剣交際。 プロポーズ。 成婚。 制度だけを見れば、順番があります。 しかし、本当に大切なのは、 その節目と節目の間に、 二人の心が追いついているかどうかです。 「結婚したい」 という気持ちが強いほど、人は先へ急ぎます。 しかし結婚とは、 早くゴールする競争ではありません。 速く走った人が幸せになるわけでもありません。 むしろ、 相手の歩幅を感じながら進める人のほうが、 長く一緒に歩いていけます。 真剣交際を申し込む前に、 ほんの少し心の中で間を取ってみてください。 「私は、この人をちゃんと見ているだろうか」 「条件表ではなく、一人の人間として見ているだろうか」 「この人の弱さを知っても、一緒にいたいと思えるだろうか」 「私自身も、この人の前で自分を見せているだろうか」 その沈黙の中から生まれる答えは、 検索条件よりずっと確かなことがあります。
第19章 真剣交際に進むべきではない7つのサイン
一方で、無理に進んではいけない場合もあります。 特に注意したいのは、会うたびに自尊心が削られていく関係です。 冗談の形で容姿を批判される。 学歴や仕事を見下される。 自分の意見を否定される。 予定を一方的に決められる。 断ると不機嫌になる。 連絡を強要される。 他人への態度が極端に攻撃的である。 こうしたことが繰り返されるなら、 「結婚したら変わるかもしれない」 と期待しないほうがよい場合があります。 また、 重大なことについて話を避け続ける人にも注意が必要です。 借金。 家族。 仕事。 子ども。 住居。 離婚歴に関する重要事項。 何を聞いても、 「そのうち話す」 「今はいいでしょう」 と逃げる。 真剣交際とは、信頼を深める段階です。 情報を隠し続ける関係では、信頼は育ちません。 さらに重要なのが、 「NOを尊重できる人か」 ということです。 今日は会えない。 それはしたくない。 もう少し考えたい。 こうした言葉を伝えたとき、 相手が尊重してくれるか。 結婚生活では、相手の「はい」だけを愛することはできません。 「いいえ」も尊重できる人でなければ、対等な関係は築けないのです。
第20章 真剣交際の前に確認したい「沈黙の相性」
婚活では会話力が注目されます。 話題が豊富。 ユーモアがある。 盛り上げ上手。 もちろん魅力です。 しかし結婚生活には、話していない時間のほうが長くあります。 朝、二人でコーヒーを飲む。 車で移動する。 夕食後、それぞれ本を読む。 疲れていて会話が少ない夜。 そんな時間があります。 だから実は、 沈黙の相性 はとても重要です。 デート中に少し沈黙したとき、 慌てて話題を探さなくても大丈夫か。 スマートフォンを触らなくても落ち着いていられるか。 景色を見ながら、ただ隣にいられるか。 こうした感覚は、プロフィールには書けません。 ある女性は、 「彼といると話がものすごく盛り上がるわけではないんです」 と言いました。 そこで、 「沈黙になったらどうですか」 と聞くと、 「不思議なんですけど、全然嫌じゃないです」 と答えました。 私は、 「それはかなり大切な相性かもしれませんね」 とお伝えしました。 結婚とは、毎日イベントを開催する生活ではありません。 むしろ何も起きない日を、 二人で穏やかに過ごせること。 それこそが幸福の大部分を占めるのかもしれません。
