第1章：社会心理学から見た結婚式と通過儀礼

1.1 通過儀礼としての結婚式

アーノルド・ヴァン・ジェネップの通過儀礼論によれば、通過儀礼は「分離」「移行」「統合」の3つのステップを経る。結婚式はまさにこの通過儀礼の典型例であり、親にとっても重要な節目となる。

• 分離：親が子どもを育てる期間の終焉。
• 移行：結婚式を通じた家族関係の再構築。
• 統合：新たな親としての立場（婿・嫁の親）への適応。

1.2 親の役割変化と心理的影響

結婚式を通じて、親の役割は「養育者」から「支援者」へと移行する。この変化に伴い、親は以下のような心理的影響を受ける。

• 親としての達成感：「ここまで育て上げた」という満足感。
• 社会的承認の獲得：「立派な親である」という評価。
• 役割喪失感：「親としての仕事が終わる」という感覚。

特に、親が過干渉であった場合、結婚を機に子どもとの距離感を見直す機会となる。

第2章：恋愛心理学から見た親の心理と結婚式

2.1 親子関係の変容

結婚によって親子関係は変化する。親にとっては「手放す」ことが求められるが、それは容易ではない。特に母親は娘や息子に対する心理的依存が強い場合、結婚式で強い感情を抱くことがある。

• 娘を嫁に出す父の心理：「自分の守るべき存在が変わる」
• 息子を取られる母の心理：「自分の役割が他者に奪われる」

2.2 エディプス・コンプレックスと葛藤

フロイトの精神分析学に基づくと、親子関係には無意識の愛着が存在する。特に母親と息子、父親と娘の関係において、結婚式は無意識の葛藤を浮き彫りにする。

• 母親の「息子ロス」：「息子を他の女性に取られる感覚」
• 父親の「娘ロス」：「自分よりも重要な存在ができる」

これらの感情を乗り越えることで、親もまた新たな段階へと進む。

第3章：具体的な事例とエピソード

3.1 伝統的な日本の結婚式と親の役割

昭和・平成・令和と時代が進むにつれ、結婚式の形式も変化している。昭和の時代には「家と家の結びつき」が重視され、親の関与が強かったが、令和の時代には「個人の幸福」が重視されるようになった。

• 昭和の結婚式：「仲人を立てる」「親が主導する」
• 平成の結婚式：「ホテルや専門式場」「親の関与は減少」
• 令和の結婚式：「ナシ婚やフォト婚」「親の意向と子どもの希望のズレ」

3.2 海外との比較

海外では、親の関与の程度が文化によって異なる。

• 欧米：「親は祝福する役割」「費用は本人負担が一般的」
• アジア：「親が強く関与」「結婚式は家族の一大イベント」

例えば、アメリカでは「ファーザー・ドーター・ダンス」が象徴的であり、父が娘を送り出す儀式として感動を誘う。一方、韓国では伝統的な婚礼儀式「ペベク（幣帛）」があり、親への感謝が強調される。

3.3 親の結婚式体験と現代の課題

近年、結婚式の形式が多様化する中で、親の期待とのギャップが問題となることもある。

• 事例1：親の期待とナシ婚のギャップ
  • ある母親：「一生に一度の晴れ舞台なのに、式をしないと言われて悲しかった」
• 事例2：親が積極的に関与したケース
  • ある父親：「子どもの希望を尊重しつつ、親としての役割も果たしたかった」

親世代と子ども世代の価値観の違いをどう埋めるかが、現代の結婚式における大きな課題である。